平方根(ルート)のない電卓で平方根を計算するには

手順

 \displaystyle
 \sqrt{5.8} を計算する例です。

まずは答えに近そうな適当な値を考えます。2の2乗が4で3の2乗が9で、5.8というのはその間ですので、2.5を適当な答え候補の初期値とします。面倒ならば1としてもよいです。

  1. メモリを使うのでメモリをクリアしておきます。これは電卓のメーカーや機種によって操作方法が違います。メモリクリアボタンがあればそれを押します。メモリ呼び出しとクリアが一体になったボタンがあれば、それを2回押すと、たぶんクリアされます。
  2. 初期値をメモリに入れます。以下の順にボタンを押します。
    • 2.5
    • M+
  3. 以下の順番にボタンを押します。途中の2というのはなんのルートを計算していようが必ず定数2です。最後に電卓に表示される数値は答え候補を修正する差分です。
    • 5.8
    • ÷
    • MR
    • -
    • MR
    • ÷
    • 2
    • M+
  4. 上記3の手順を繰り返します。最後に表示される差分は、繰り返すごとにどんどん小さくなっていくはずです。差分が満足できるほど十分に小さくなったらやめます。
  5. メモリに入っている値がルートの答え。

説明

 \displaystyle
 \sqrt{a} を計算するために  \displaystyle
 x^2 - a = 0 の方程式を解くことにします。

 \displaystyle
f(x) = x^2 - a

として、ニュートン法

 \displaystyle
x_{i+1} = x_i - \frac{f(x_i)}{f'(x_i)}

で、  \displaystyle
 x_1, x_2, ... を計算していき、収束したらそれを答えとします。

微分  \displaystyle
 f'(x)

 \displaystyle
f'(x) = 2x

です。この  \displaystyle
 f(x), f'(x) ニュートン法の式に代入して整理すると、

 \displaystyle
\begin{align}
x_{i+1} &= x_i - \frac{f(x_i)}{f'(x_i)} \\
&= x_i - \frac{x_i^2-a}{2x_i} \\
&= x_i + \frac{a-x_i^2}{2x_i} \\
&= x_i + \frac{1}{2}\left(\frac{a}{x_i} - x_i\right) \\
\end{align}

電卓の手順では  \displaystyle
 x_i はメモリに入れておきました。 \displaystyle
 a は最初の例でいうと5.8になります。

経緯

統計検定の試験を受けました。統計検定では電卓の持ち込みが可なのですが、統計の計算ができるような関数電卓は不可です。私は電卓を2つ常備していますが、どちらも関数電卓SHARP EL-5160S、CASIO fx-JP900)で、試験持ち込みは不可です。

試験に持っていける電卓を家で探したところ、妻の使っている事務用電卓が使いやすそうでした。

しかし、なんとその電卓にルートがなかったのです。ルートのない電卓があるとは想像しておらず、直前まで気が付きませんでした。

慌てて、ルートを四則演算だけで計算する方法を考えました。

(実際の試験でルートの計算が必要な場面では、ルートは暗算で十分でした)